JR常磐線のデッドセクション

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JR常磐線は直流電化区間と交流電化区間があります。 取手と藤代の間に交直切換地点があり、 そこから上野よりは直流 1 500 V、土浦よりは交流 20 000 V で電化されています。 このページのサウンドデータは、 この地点を通過する際に聞こえる特有の音を収録しています。

デッドセクション

直流の架線と交流の架線の繋ぎ目には、 電気のかかっていない短い区間が存在します。 これをデッドセクション(死電区間)と言います。 セクションというものは必ずしも交流と直流の接続点とは限らず、 直流(或いは交流)同士で電圧が異なるものもあります。 常磐線の場合は交流と直流の接続点であり、 その意味で交直セクションとも言います。

常磐線のセクションは、取手と藤代の間の、藤代駅から約 1.3 km の地点にあります。

取手以遠が交流電化された歴史的経緯

柿岡に地磁気観測所があり、ここから半径 35 km 以内に直流の大電流を流すと地磁気の観測に影響を与える為、常磐線の取手以遠の区間は交流電化とされました。

交直両用電車

常磐線のような異なった電化区間にまたがって運用される車両は、 気動車(ディーゼル車)などのように電気によらない車両なら問題ないのですが、 電車や電気機関車の場合、 異なった電化方式に対応した車両でなければなりません。 常磐線を走っている415系(→写真 A)やE501系(→写真 B)などの電車はこの条件を満たしています。
常磐線にはこの他に103系電車(→写真 C)も走っていますが、 これは直流専用の車両です。 従って103系は直流区間(上野~取手)のみに使用されています。

セクション付近の設備


(1) 上り線(交→直)では、藤代を出てからセクションの手前まで(1)(5)の合計5個の標識があって、運転士にセクションの存在を予告しています。
一方 下り線(直→交)には2個の標識があります。


(2) 2つめの標識。
‘切替’の漢字が他の標識と異なっている理由は判りません(^_^;)。


(3) 3つめの標識は、次の(4)と同じ内容が電光掲示で示されていました。
場所の都合で残念ながら撮影出来ませんでした。

(4) 4つめの標識。


(5) セクションの直前には六角形を赤白に塗り分けた標識が立っています。


(6) インシュレータ セクション (開始)。
絶縁体で出来た‘架線’が、双方の導体架線を繋いでいます。
矢印で示した点より向かって右が交流の架線、左が絶縁体です (と思います。実際に確かめた訳ではないので…)。


(7) インシュレータ セクション (終了)。
矢印で示した点より右が絶縁体、左が直流の架線です。


車両

写真 A 415系 交直両用電車
藤代駅 上り線ホームにて撮影(1997-01-15)。


写真 B E501系 交直両用電車
上野駅にて撮影(1997-04-29)。


写真 C 103系 直流専用電車
取手駅にて撮影(1997-04-29)。


セクション通過時の様子

415系の場合、運転士はセクションの手前で運転台にある切換スイッチを操作し、 パンタグラフの回路を切断します。この時ABB(空気遮断器)が動作するのですが、 これが結構大きい音で、 パンタの真下の席に座っているとこの音をはっきり聞く事が出来ます。 そして音と同時に、車内の照明が一斉に消灯します。
セクションは、 ノッチオフ(モータに電気がかかっていない状態)のまま惰行で通過します。
セクション通過後にパンタが新しい電化区間に入ると、 車両の回路がこれを検知して集電が再開されます。 これにより車内照明が再度点灯します。
1997年1月に私が乗車した時は、 照明はだいたい15秒以上消えていたと思います。

万一、交→直 で切換を失敗すると、車両の交流回路にダメージが及ぶので そのままでは交流区間は走行不能になってしまうそうです。 一方 直→交 では切換に失敗しても、 スイッチを操作し直せば大丈夫だそうです。 このため、上り線(交→直)では下り線(直→交)よりも多くの標識で 運転士に注意を促しているものと思われます。

E501系は交直切換はスイッチ操作不要で、自動で行われるようです。

サウンドデータ



モノラル
上野09:14発 土浦ゆき415系普通列車が、 ABBを働かせて取手~藤代のセクションを通過します。
録音は、パンタの真下の座席に座り、膝の上に録音機材を乗せて行いました。 (1997-01-15)


初夏の陽差しのもと、 高萩10:03発 上野ゆき特急[ひたち110号]が、 ABBを働かせて直流区間に入ってゆきます。
録音は、(2) の ‘交直切替’ 標識付近の道路から行いました。 (1997-04-29)